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国との間で和解が成立しました。

第1 ご報告
 令和8年(2026年)2月13日に、広島地方検察庁で発生した検事の自死事案にかかる国家賠償請求訴訟に付き、国との間で和解が成立しました。

 令和元年(2019年)12月10日に本件が発生してから6年2か月、公務上の災害を認定するよう申し立てを行なってから5年3か月、国家賠償請求訴訟の提起から1年5か月で、本件は、一応の区切りを見たことになります。

第2 これまでの経緯

2019/12/10本件事案の発生
2021/1/5本件事案の報道
2021/11/29公務上の災害と認定するよう申し立て
2022/6/24法務省宛に再発防止の提言書、公務上の災害との認定を求める署名を提出
2023/9/30本件を公務上の災害と認定する旨の通知
2024/9/17国家賠償請求訴訟及び情報開示請求に対する一部不開示決定の取消等を求める訴訟を提起
2024/11/19第1回弁論期日  → 国側は認否を留保。       本日まで、和解協議。
2026/2/13和解成立

第3 和解等の内容

 1 和解等の要旨

・ 国は、広島地検の当時の次席検事の指導を含め、上司らの対応が配慮を欠いた不適切なものであったことを認めた

・ 国は、公務災害報告に向けた調査が当初十分に行われなかったこと及び公務災害報告に関する原告らへの情報提供が不十分であったことを認めた

・ 原告らから再発防止策の浸透状況について問い合わせを行った場合に、誠実に対応していただくことを約束した

・ (和解条項には盛り込まれなかったが、)日常の良好な職場環境の確保や同種事案発生時の公務災害に関する対応等についての方針の周知を目的とした、法務省から各地検幹部職員宛の通知の発出を行うことを約束した

2 和解等に対する受け止め

⑴ 訴訟での主張との関係
 訴訟での主張は大まかに、安全配慮義務違反、原因調査義務違反及び説明義務違反を内容とするもの。
 いずれについても、和解条項の中で国側が不適切さを認め、通知等の発出を含めて改善策をとることを約束いただいたものと理解をしています。

⑵ 通知について

ア 概要

 通知の内容は、概要

① 在庁時間の把握・管理について、将来的なシステム整備の進捗状況等を踏まえ、客観的資料を用いた在庁時間の管理、把握に努めること

② 検察庁外のハラスメント相談窓口として、人事院に設置された相談窓口を、庁内サイトの見やすい場所に掲載して全職員に対して周知すること

③ 同種事案が発生した場合の遺族への連絡体制、遺族に対する配慮、調査体制構築に関する基本的な考え方、調査内容に関する基準

となりました。

イ 原告側の受け止め
 ①に関しては、和解協議において、厚生労働省の通達に準じる形で、客観的な勤務時間の把握を行うべきであるとの提言を行なったものの、全庁的な対応となることや予算の問題があることなどを理由に受け入れられませんでした。
 検察の仕事は、人の処罰の要否を判断するものであり、必然的に強いストレスを伴います。長時間労働を伴うことも、ある種必然的なところがあり、長時間の労働そのものよりも、職員にどれくらいの負荷がかかっているのか可視化できる環境こそが重要であると考えています。そのため、この点に関しては、今後の課題として残ったと考えています。

  ②に関して、当方からは、外部相談窓口という提案をさせていただいていたところ、人事院においてハラスメント相談窓口があり、その相談窓口に関する周知案内を、庁内サイトのトップページに置いていただけるとのことでした。
この点に関しては、庁内では相談がしにくいとの問題を解決する具体的な提案として受け入れさせていただいたと認識しています。

 ③に関しては、ある程度、こちらの要望を汲んでいただいた内容とはなったものの、抽象的な表現ぶりが残りました。しかしながら、まずは運用を開始していただくのが重要であることから、現時点で合意ができる点について、提案をいただき、合意に至ったという認識です。
 こちらについても、今後に残った課題と考えています。

ウ そのほか(提案こそしたが受け入れられなかったもの)

  •  第三者委員会の設置について
     設置基準の策定を求めたものの、受け入れられませんでした。高検、最高検、法務省は、別の組織という体ではあリますが、やはり同じ検察庁内に見え、調査等に客観性が不足するようにみえると考えています。第三者の目が入るか入らないかで、遺族側の納得感は全く違ってくるものであり、NDA締結などによる保秘の問題解決についても検討の余地があるのではないかと考えています。
  • 調査機関を「上級庁」とする記載について(抽象的な記載に止まっている点)
     同種事案が発生した際に、その場に出向いた家族としては、当然、状況が飲み込みきれずにいることが想定されます。その上、職場の方に迷惑をおかけするわけにはいかないという気持ちも働くため、家族としては、検察庁に対して、どこまで何を言い、求めてよいのかという判断に迫られ、最終的には、何も言えずに流されてしまう問題があると考えています。そのため、家族の意向を確認していただけるなどの提言があったことは進歩であると捉える一方で、実際の運用において、趣旨を踏まえた上級庁の位置付けと関与の仕方を示し、十分な聞き取りや配慮を行うよう求める次第です。
  •  勤務時間の把握
     検察の仕事は、人の処罰の要否を判断するものであり、必然的に強いストレスがかかるものです。長時間労働を伴うことも、ある種必然的なところがあり、長時間の労働そのものよりも、職員にどれくらいの負荷がかかっているのか可視化できる環境こそが重要だと考えています。
     その点について、予算等の問題があることは承知していますが、踏み込んだ対応まで盛り込めなかったことは、残念です。
     平成10年代の判例でも自己申告による問題は裁判所でも指摘をされているところであり、30年以上も放置しているような現状には、早くメスを入れるべきではないかと考えるところです。
  •  人事関連
     適材適所を求めた、人事に関する提言も行なっていたのですが、通知や和解条項には盛り込まれませんでした。多様な側面からの評価が必要であり、複雑な事情が絡むものであることから、和解という話の中に盛り込むことが相当困難であることはそうなのであると考えられますが、適材適所、幹部になることこそが全てではなく、(おそらく職場内で把握できているであろう)決裁官としての適性については、厳しく判断されるべきであると考えます。(ハラスメントを擁護するつもりはありませんが、適切なフォローができていれば、そうそう信頼関係は崩れないと思われます。)     

第4 総括

  •  本件を担当ないし関与された法務省、検察の方々に対する感謝
     和解にあたって、本件事案の窓口となっていただいた訟務検事、公務災害の対応を含め対応にあたっていただいた法務省の担当者や広島地検の方々には、連絡をとらせていただくたびに、他人事ではなく、自らの問題として仕事をしていただいたと感じています。
     正直、通達を出していただけるというアイデアが出てくることは想定しておらず、このような内容で和解に至れたことは感謝するばかりです。
     担当の方からは、「仲間が亡くなった問題」という風に言っていただいたこともありました。
     今回、我々は、内容に完全な満足をしたわけではないが、現場担当者の方々のご尽力には頭が下がる思いでいます。
  •  検察庁全体の問題としての対応
     今回の訴訟等は、一人の検事が亡くなったことを対象とした訴訟でした。また、訴訟等を遂行する中で、我々が調査をすることができたのは、官報に掲載された検察官の死亡(官吏死亡)の件だけでした。
     聞き及ぶところでは、検察事務官にも本件同様の問題が検事以上に発生しているとのことで、法務省(検察庁)全体の問題として対応する必要があることは言うまでもないと考えるところです。特に、すぐにでも始めるべきは、労働時間の正確な把握による、健康状態の管理体制構築であり、この点に関しては、今後、我々が再発防止策の浸透状況確認のために、口うるさく確認をさせていただきたいと特に考えている点です。
  •  解決時間に関する問題の改善
     本件事案の発生から和解まで6年以上が経過しました。
     亡くなった検事の同期は、すでに中堅検事としてのキャリアを積むに至っています。やはり時間がかかり過ぎているのではないかと思います。
     拙速な対応は望みませんが、やはり適切な期間は、遥かに超えてしまっているのではないかとの印象を拭えないものでした。
  •  今後の活動について
     (原告ら代理人橋詰は、)弁護士となって、検察を外から見て、色々と思うところはありますが、日々の暮らしの安全は、検察、警察が担っていると考えています。
     何かと批判もされる仕事ではありますが、社会には不可欠な存在だと考えています。現在もしくは、これから検察の中で働く方々には、必ず苦しい場面は訪れると思いますが、組織側には、働く人たちが健全に仕事をしてもらえる環境を整備していただけるようにと考えています。
     もう昔話にこそなりますが、私にとって、検事の仕事は、とてもやりがいを感じるものでした。それだけに、本件が発生したこと(防ぐことができなかったことも含め)、本件発生後の検察庁の対応、当事者幹部らの対応には、深く失望させられたものがありました。
     私の仕事に対する基本的な考え方・マインドは、私を指導してくださった検察の方々によって築いていただいたものです。少なくとも、私は、(語弊を恐れずに)先輩らの厳しくも愛のある指導と、検察の同期、後輩、事務官の方々と困難な時間を支え合うことを繰り返して、一人の法曹としての基本を身につけることができたものです。
     また、検事の仕事は、亡くなった検事も、自ら希望してなることを選んだ仕事でもあります。
     したがって、我々は、同様の事象の発生をなくすため、本件を風化させることなく、建設的に、時には厳しい意見を出しながら、より良い職場環境を実現し、職員の十分なフォローができる体制構築のための提言をしていきたいと考えています。

法務省から公務災害と認定する旨の通知をいただきました。

 12月4日夕方頃から報道されておりますとおり、令和元年12月10日に広島地方検察庁において発生した検察官の自死事案につきまして、令和5年9月22日付けで公務上の災害と認定する旨の通知を法務大臣名義で受領しましたのでご報告させて頂きます。

 公務上の災害との認定がなされた報告がこのタイミングになりましたのは、前記通知受領後、令和5年11月9日に法務省、広島地方検察庁、広島高等検察庁の担当者らから公務上の災害を認定したことに関する説明を受ける機会を頂くこととなっていたため、その説明後に、その内容と併せて公表させて頂きたいと考えていたためです。

 前述の説明の機会では、検察庁内部において、PCログとの突き合わせを行うことによって、より正確な勤務時間を把握できるようにするなど、一定の改善がなされていることの説明はありました。しかし、PCを利用していない勤務時間の把握や、超過勤務過多となった際の対応については、必ずしも十分ではないとの印象をもたざるを得ない内容でした(現に、本件後、複数名の方が超過勤務等を原因として自死するに至った旨の報道等に接しているところです。)。
 また、公務上の災害と認定された理由については、「客観的な業務内容、時間外勤務の状況、その他の事情」を踏まえると公務起因性が認められた旨の説明こそあったものの、公務上の災害に関する認定であることを理由に、時間外勤務以外に我々が問題視をしている当時の上司の言動等に対する評価はなされなかったとの回答でした。
 当事者である2名の上司から、何らかのコメントを頂くこともできませんでした。
 我々としては、上司が行った、亡くなった検察官に対して行った言動等につき、その細かな経緯、理由、業務上の必要性等に関して、本人の話等も含めて調査、評価がなされることを期待していた所ですが、これについては、期待していた回答が得られなかったこととなります。
 今回の法務省らからの説明を受け、本件と同様の事案が本件後に複数発生していると聞き及んでいる状況を踏まえ、亡くなった検察官のご家族からは、「事案から約4年が経過しているが、気持ちとしては何も変わっていない。子どもは、検察官という仕事について、起きたことについて向き合い、原因を深く掘り下げ、相手にしっかりと納得させて完結する仕事である、ということをよく言っていた。子どもが誇りを持って就いた職場で、二度と同じことを起こしてはならないという気持ちであるし、そのために、徹底的な原因究明とそれを前提とした再発防止策の策定は不可欠と考えている。
 今回、法務省からは、公務災害の認定に当たって必要な点のみを認定したとの理由から、叱責を受けたことに対する評価には立ち入っていない旨説明を受けたが、このような対応で、本当に再発防止が期待できるのか、疑問といわざるを得ない。」

 とのコメントを頂戴しているところです。

 今後、我々としては、前述した点についてさらなる事案解明等に努めるため、国家賠償請求訴訟等の提起を含め、活動をしていく予定です。

 引き続き、お力添え頂けますと幸いです。

広島地検から法務省に対する災害の報告を行った旨の報告を受けました。

 先日、令和4年11月11日、法務省及び広島地方検察庁から、我々が行っていた災害が公務上のものであること認めるよう求めた申請に対し、補償事務主任者である広島地方検察庁から実施機関である法務省に対し、災害の報告が令和4年9月30日に行われた(人事院規則16−0第20条)旨の報告がありました。

 災害報告の内容には、事実関係を精査して整理する補償事務主任者の意見が付されているのですが、こちらの意見につきましても、当方の意向を汲んだ内容となっていたもので、最終的な認定を行う実施機関である法務省が、前記規則22条に基づいて、「速やかに」公務上のものであるかどうかの認定を行わなければならないことになります。

 ただ、規則上は、速やかにとはなっているものの、実際にどれくらいの時間がかかるかということは不明であり、長い場合には1年単位の時間がさらにかかってくるおそれもあります。

 我々としては、ハラスメント関係の認定に関して曖昧となっている点が残っていることや、最大の関心事である再発防止に関する具体的なアクションに関して説明が及ばなかったことなど、課題は残ってはいるところです。

 しかし、一歩一歩ではありますが、歩みを進められていることは確認できたところであり、ここに皆様にご報告をさせていただく次第です。

 引き続き、暖かい目で見守っていただけますと幸いです。